919_dead-ball
僕は、とあるキャンプ場からの依頼で松の枝打ちに挑もうとしていた。重い腰道具をぶら下げ、気合い十分でロープに手を掛けようとしたその時、ニコニコ顔でこちらへ近づいてくる青年が。目の前のダムが工事中だったので、その格好から作業員だとすぐにわかった。会釈を交わすと青年は木の上を指差して「アノロープ!アレ!」と片言で喋った。僕はビックリしながらもその質問に答えようと奮闘した。「あんな高い所にどうやってロープを掛けたんだい?」という質問と解釈して説明するのだが、外国人の彼にはわかりそうもなかった。
僕は青年を連れて車へ引き返した。そうして巨大なパチンコと細いロープとオモリを取り出し、打ち上げ方をポーズして見せた。すると青年はそれは嬉しそうに大きく頷いた。なんだかとても可愛い。青年の質問は続いた。「ナンネン!ナンネン!」年齢のことなのか、それとも木登りの習得まで何年掛かったかの質問なのか。僕は後者と捉え3年と答えておいた。「サンネン…」彼は神妙な面持ちで何か思いにふけっているようだった。しかしすぐに元の表情に戻り「アリガットネ!」とお礼を言った。
僕は純粋な心の動きをする人に出会う度、なんともいえない懐かしさに酔わされる。その日、僕は一日中気分が良かった。 (H・H)